2022.08.11Blog
「老犬は美容お断り」というサロンがまだまだ数多く存在する。
動物病院に併設されているトリミングルームですら断られるケースも多いと聞く。
飼い主さんからすれば「動物病院なら何か起こったとしても安心」と思って動物病院のトリミングを選ぶのだろう。
けれど、獣医という専門家がいる動物病院であっても、要はそこに勤務するトリマーに技術力や経験値がなければ、難易度の高い犬のグルーミングは不可能なのだ。
つまり、名医のいる動物病院でも新人トリマーしかいなければ意味がない。
たしかにシニア犬のトリミングは本当に大変である。
むかし吉本新喜劇で間寛平氏がやっていた「止まったら死ぬんじゃ〜」というギャグをご存知だろうか。
ハイシニアのトリミングはまさにそんな感じである。
立っていられないのでよろける。
座ったり寝転んでくれればいいと思っても、すぐに起き上がろうとする。
関節が硬いのでお座りさせるのも難しい。
とにかく顔を持たれるのを嫌がる。
結果、テーブルから何度も飛び降り(←落ち)自殺未遂。
そんなわんこにハサミやバリカンを近づけることの恐怖ったらハンパないのだから。
初心者は怖くてできないだろう。
何千頭、何万頭のトリミングを経験して、犬体コントロールが手に染み付き、犬の動きを予測できる数多くの引き出しを持っていてこそできる技だと私は思っている。
そんなシニア犬のグルーミング、たしかにサロンも動物病院も、引き受けることは大変なリスクを伴う。
けれど、シニア犬にこそこまめなグルーミングが必要なのだ。
若い犬と違って皮脂の分泌も多くベタつきやすくなり、目やにや口まわりの汚れも多くなる。
便もゆるくなり、尿漏れなどもある。
被毛にハリやツヤもなくなるので、若い時に比べてすぐにヨレヨレ・シナシナになる。
けれど、私はシニア犬にこそ尊敬の念を抱いている。
シニア犬は、生涯にわたり数多くの癒しを人間に与えてくれ、いのちとの触れ合いの大切さを教えてくれた、大いなる存在である。
そして、シニアになっても美容に出してもらえている犬たちはきっと、この世で最も愛されて生涯を過ごしたペットの代表だと思う。
私はさいごのときまでトリミングしてあげる。
そのために日々技術を磨いているのだから。