2019.06.13Blog
「20年前のお値段です」と、かつて竿竹屋の販売車がよく言っていた。
犬のトリミング料金も同じ。
大概のお店は20年前のお値段そのままである。
逆に安くなっているところもある。
それとは逆に、トリマーへの〝犬に対する優しさ〟や〝犬にストレスをかけないような技術〟などは年々厳しく求められるようになっている。
何故だろう。
人間社会では自分のこと、つまり「ヒト」のことがまずはじめ。
たとえば「衣・食・住」など。
次に自分のクオリティ・オブ・ライフを上げるためのもの。
たとえば「ネイル」「メイク」「アクセサリー」「スマホ」など。
口では「家族の一員」とか「○匹とか○頭とか言わないで」とか言っているけれど、やはり経済的に見ればペットのことは二の次三の次なのだ。
トリマーという仕事をよく分かっていない人は未だに多い。
「トリマー=犬の美容師」だと思っている人も多い。
トリマーの仕事内容というのは、ヒトで言えば〝ネイルサロン〟に行き、〝耳かきリフレ〟もしくは〝耳鼻科で耳掃除〟に行き、〝理容室でヒゲ剃り〟に行き、〝入浴介護サービス〟をしてもらい、〝歯医者〟で歯みがきをしてもらい、そして〝美容院〟に行ってはじめて完了なのだ。
なんと至れり尽くせりなのだろう(笑)
それに加えて、フードやサプリメントの提案やふだんの生活面におけるカウンセリング、病気予防のアドバイスなど、『保育士』や『保健師』にも似た仕事も担う。
先日知り合いのトリマーがシェアしていた、あるトリマーのブログを読んで心底共感した。
『タバコは20年前とくらべて倍以上のお値段になっているのに、トリミング料金の値上げとなると「高い」と言われ、私たちはそのたびに傷つく。』
〝ペットブーム〟と世間は軽々しく口にするけれど、〝ペット業界ほど見放されている業界はない〟と言っても過言ではないと思う。
その一因は、世間の『動物好きの人は心が優しい』という捉え方。
もちろん私たちは動物も人も愛しているし、決して悪どいわけでも冷酷なわけでもない、優しさに満ちあふれた人たちである。
けれど、私たちがやっているのは〝慈善事業〟でも〝奉仕活動〟でもなく、あくまで〝ビジネス〟だということをもっと分かっていただきたい。
『ペットが好きなんだから、好きを仕事にしているんだから、薄給でもやりがいがあれば幸せでしょ?』
先日知人に言われたのだが、なんだかとても他人事で無責任な言葉に聞こえた。
『ペットが好き=薄給でも大丈夫』
どうしてこのような構図が成り立つと思うのだろう。
我々の仕事は特殊技術や知識、経験、そしてセンスを必要とする専門職である。
はたから見ていれば、何をしているのか分からない人もいるだろう。
けれど、たとえば昭和世代の人にとって〝何をやっているのか分からない業界〟の代表格である『Web制作』や『SEO対策』などのパソコン関係の仕事に対しては、高額を要求されても支払うのだ。
『私たちにはできないことを代わりにやってもらってる』
という意識がきっとあるのだろう。
我々トリマーの仕事の必要性をもっと幅広く理解してもらえる方法はないものだろうか。