私は、自分の愛犬であるミニチュアプードルをドッグショーに出している。
ドッグショーというのは、ヒトの世界で例えて言えばミスコンのようなもので、それぞれの犬種スタンダードに基づいて個体審査が行われ、評価される。
審査を受けるには、犬種によっては定められたカットスタイルを施す必要があり、そのカットスタイルを維持するためには、毎日相当の細やかなケアが求められる。
カットが必要な犬種の場合、一般家庭ではなかなか繊細な手入れを続けるのが難しい。
そこで、プロの『ハンドラー』という仕事をしている人に預けるという選択肢が上がってくる。
ハンドラーというのは、オリンピックで言えばコーチのような立場で、カットが必要な犬種であってもそうでない犬種であっても、お客さんの大切な愛犬(←選手)を預かり、日々のトレーニングや体づくりをして、さらにショーにおけるマナーを犬に教え込み、カットが必要でない犬種であればグルーミング、カットが必要な犬種であればさらにトリミングを施し、ショーの当日はリングの中でその犬を『犬種スタンダードに最も沿う個体』に魅せるのが仕事である
もちろんビジネスとして成り立っているものなので、預かり料やトリミング代、ショーの出陳料からハンドラーの交通費、ハンドリング料に至るまであらゆる費用を飼い主が負担することになる。
その代わり、ハンドラーはそのプロの技術・手腕により素晴らしい成果を上げてくれる。
けれど、そんなに高額な費用をかける余裕がない場合もあり、それでも自分の愛犬の評価を受けてみたいという飼い主さんもいるだろう。
そういった場合は、私のようにアマチュアハンドラーとして自分の愛犬を自分のハンドリングでショーに出陳することもできるのだ。
ドッグショー主催者によっては、ショー会場で『オーナーハンドリング講習会』なるものを開催しているケースもあり、初心者でも愛犬と共にドッグショーを楽しむための技法を学ぶことができる。
ミスコンやオリンピックほど出場枠が狭いものではなく、所定の団体の血統書が発行されている個体(犬)で、飼い主名義であり、その団体にマイクロチップナンバーの登録がなされており、避妊去勢がされておらず、飼い主自身もその団体の会員であるなどの条件を満たせば誰でも事前出陳申し込みが可能である。
もちろんプロフェッショナルのハンドラーたちに混じって審査を受けることになるので、『犬を魅せる技術』は到底かなわない場合も多い。
けれど、ドッグショーは『ドッグスポーツ』の一種であり、ショーマンシップに則り正々堂々と審査を受ければ、愛犬との清々しく心地よいひとときを堪能することができるに違いない。
飼い主にとっては、その犬がペットとして過ごしていてもショードッグとして育てていても、大切であることは同じ。
ショークオリティの個体でもペットスタイルのカットにしてショーなど一切出ずに過ごしている、いわゆる『芸能人でないのにゲキ可愛い一般人』のような子もいるし、プロのハンドラーの仕事にしろ飼い主の趣味にしろ、ドッグショーに犬を出陳する権利があることも紛うことなき確かなことである。
それに、飼い主(オーナー)がいてこそ、その個体を可愛く思い自慢に思い正式に評価してもらいたいと思う人間がいるからこそプロフェッショナルの仕事も必要とされるのだ。
そして、どんな素晴らしいショードッグも、ステージを降り家に帰ればほかのペットドッグと同様、一家庭の愛玩犬である。
そう、どんなに有名なハリウッドスターもひとりの人間であり、誰かの大切な家族であるのと同じように。