皆さんがよく知っている犬種の代表的なものに、ダックスフンド、チワワがいますが、これらの犬種は〝被毛の長さ〟や〝毛質〟に種類があるのはご存知ですか?
毛質で分けると、チワワには2種類、ダックスフンドには3種類のバラエティが存在します
毛質においてチワワとダックスフンドに共通するのは、まずスムースコート(※チワワではスムースコート、ダックスフンドではスムースヘアードと言います)
※JKCスタンダードより画像拝借させていただいております
これはかなり短毛です
ダックスフンドでは1センチ未満、チワワのいちばん長いお尻の上あたりでも3センチを超えない位の長さで、どれだけ時間が経ってもこれ以上は伸びません
(※ただし、スムースとほかの毛質を掛け合わせている場合は中途半端な被毛の長さの個体が生まれることもあります←これは果たして正しいブリーディングなのでしょうか?)
次に、これもチワワとダックスフンドに共通する毛質は、ロングコートです(※これもチワワではロングコート、ダックスフンドではロングヘアードと言います)
※JKCスタンダードより画像拝借させていただいております
このロングコート(ロングヘアード)は、前胸・お腹・お尻・尾の裏・耳、そして足のつま先の毛はある程度まで長く保持し、鼻まわり、顔まわり、四肢の前方、後頭部から背中にかけての被毛は一定以上伸びないという特徴があります(※鼻まわりや顔まわり、四肢の前方の毛はかなり短く、後頭部から背中にかけての被毛はそれよりもいくらかは長い状態を保持します)
たとえば、これもみなさんよくご存知の犬種であるプードルは〝シングルコート〟といって1種類の毛のみで覆われており、抜け毛もほとんどなく、そしてさらに頭のてっぺんから足の先までの全身の被毛が均等にどんどん伸びる犬種ですが、チワワ、ダックスフンドなどは〝ダブルコート〟といって硬く太い上毛(オーバーコート)と柔らかく細い下毛(アンダーコート)の2種類が生えており、さらに先ほどお伝えしたように部分的にしか被毛が伸びることはありませんし、長く伸びた部分も延々と伸びるわけではなく、ある程度の長さで伸びは止まります
(※ただし、ダックスフンドの残り1種類の毛質であるワイアーヘアードという毛質は、プラッキングというお手入れをしていれば下のイラストのように身体にしっかりはり付いた硬い被毛に覆われますが、プラッキングをせず放っておくと全身の毛の色が薄くさらに柔らかくなり、ふわふわヨレヨレボサボサになります←ひどい言いよう(笑))
※JKCスタンダードより画像拝借させていただいております
説明が長くなってしまいましたが、今日はこの〝ロングコート〟〝ロングヘアード〟について少しお話させてください
先ほど、ロングコート(ロングヘアード)のチワワやダックスフンドは、前胸・お腹・お尻・尾の裏・耳・足のつま先の被毛が長く保持するとお伝えしましたが、これらのうち〝長さを短くして切りそろえる〟のは、本来『つま先の毛』だけなんです(※バランスを整えるために毛先をわずかに切りそろえる箇所はいくらかあると思いますが、〝毛の長さを短くパツンと切りそろえる〟ことはしません)
何故なら、その長く保持している被毛は〝飾り毛〟だからです
その〝飾り毛〟があることにより、その犬を〝ロングコート(ロングヘアード)〟たらしめているのであって、その〝飾り毛〟こそが〝ロングコート(ロングヘアード)らしさ〟を表現し、ロングコート(ロングヘアード)であるという条件を成立させているわけなのです
それを知ってか知らずか、ロングコートチワワやロングヘアードダックスフンドのオーナーさんはほとんどの方がその〝飾り毛〟を〝ムダ毛〟とおっしゃいます(笑)
犬種本来の姿を知っている我々からすれば、
「えっ?!飾り毛切っちゃっていいんですか?!せっかくロングコート(ロングヘアード)飼われてるのに?!ロングコート(ロングヘアード)っぽく見えなくなっちゃいますよ?!」
って思っちゃうわけなんですが、オーナーさんにはオーナーさんのお考えがあると思いますので、毛質の説明などを細かくさせていただいたのち、ご要望に応じて〝飾り毛〟を短くさせていただいております
ロングコート(ロングヘアード)のオーナーさんの中には、
①「毛が抜けるのが嫌だからバリカンでツルツルにしてください」
という方と
②「この長く伸びてくる所をまわりと同じ長さにしてください」
という方がおられます
オーナーさんには失礼を承知ですが、あえてツッコませてください(笑)
①「バリカンで短くしても毛は抜けますから(笑)」
②「ロングの意味ないですやん(笑)」←このツッコミは①にも当てはまります(笑)
もちろん、私のわんこではないのでオーナーさんの意向に沿うのは当然の事なのですが、〝飾り毛〟を〝ムダ毛〟と言ってしまうオーナーさんは果たしてご自身の大切な家族の一員であるわんこについてきちんとした知識をお持ちなのか、いささか不安になってしまう古株トリマーなのでした
ちなみに、ロングコート(ロングヘアード)のチワワやダックスフンドで、ボディや四肢の前方などにふわふわの白っぽい毛が増えてくる場合があります
それは先ほどお伝えした下毛(アンダーコート)が抜けきれずに残っている状態で、そのふわふわ毛により上毛(オーバーコート)が押し起こされ、モジャモジャ感・モコモコ感が出てきてしまいます
そうならないためには、日頃からレーキングといって下毛(アンダーコート)を定期的に除去することが大切です(※グルーミングサロンでご相談ください、もし理解できていないトリマーしかいないサロンなら・・・ご決断はお任せしますw)
私たちの髪や皮膚の健康も同じで、お手入れをせず傷みまくった髪の毛を、同窓会前だからと一度だけ高級なシャンプーで洗ったところで、付け焼き刃にしかなりませんよね?
『美しさは1日にして成らず』
せっかく可愛い我が子を迎え入れたのですから、その犬種についてしっかりと勉強し、よく知り、外見から性格に至るまでその犬種らしさを最大限に発揮できるわんこライフを提供してあげたいですよね✧*。
さらに言わせていただくならば、我々グルーマー(トリマー)は『毛を短く切る』のが仕事ではありません
『犬体を常に清潔にして日常の健康を保ち、さらに犬種の特徴を発揮してその犬種の理想像に近付けるため、犬体各部のバランスを考えながらプラッキング(←毛を抜く)・クリッピング(←バリカン)・カッティング(←ハサミ)などの技法で余分なコートを取り除き、被毛を整えることでその犬の犬種らしい美しさを増大させる』のが仕事なのです
ただただ短くカットしてしまえば、そりゃあお手入れは楽かもしれませんが、いったいなんの犬種を飼っているのか分からなくなってしまいます
ちなみに下のイラストはそれぞれの犬種の被毛をバリカンで短くツルツルにした時の姿です
※JKC犬種標準図鑑より画像拝借させていただいております
どうでしょうか?
犬種について詳しく勉強している人以外は、まちがいさがしのように見えるのではないでしょうか
このように、被毛はその犬種の被毛バラエティたらしめるためのかなり大きな要素を占めているというのがお分かりいただけたかと思います
毛のお手入れはなにも〝短く切る〟ことだけでも〝毛先を切りそろえる〟ことだけでもありません
先ほど述べた下毛(アンダーコート)を取り除くだけでもずいぶん日ごろの管理が楽になりますし、見た目もスッキリします
中には「飼い始めてから娘さんの犬アレルギーが発覚してやむなく愛犬の被毛をツルツルにしなければならなくなった」という方もおられましたが、そういった理由がないのであれば、是非とも愛する家族の一員についていま一度よく〝知り直して〟いただき、スタイルやお手入れ方法、お手入れ頻度などを考え直していただけると嬉しいです
犬種ならではの骨格構成や体躯構成、皮膚や被毛の健全性、性格や習性の特徴などをこよなく愛し求める、いちトリマーのひとりごとでした