ヒヨコ鑑定士という仕事をご存知だろうか。
主に孵化したばかりの鶏のヒナの性別を判定する専門職で、正式名称は「初生雛(しょせいびな)鑑別師」といい、公益社団法人畜産技術協会が運営管理する日本独自の民間資格である。
むかしテレビで見てその存在を知り、密かに夢見ていた。
その時はトリマーとして生活を始めて何年も経っていたので、「いつか資格を取れればいいな」くらいに思っていた程度だったけれど。
孵化したばかりのヒナは、ほぼ全くと言っていいほどオスメスの区別がつかない。
それを、初生雛鑑別師は約3.5秒に1羽以上のペースで鑑別していくのだ。
違いは本当にわずかなもので、何千羽、何万羽と見てきた経験がものをいう仕事だと思う。
初めてその仕事を知った時、犬界(←犬業界)に生きる者として、ある種の共通点を感じたのだ。
私たちは「犬種スタンダード」を知り、ドッグショーに赴きその標準に近い個体を見て学ぶ。
それと同時に、トリミングの仕事やふだんの生活の中で、犬種スタンダードからはるかに逸脱したペットタイプの個体も数多く見る。
私たちが一般人と異なるのは、すべての犬を意識して見ているということ。
「あの犬はなんの犬種だろう」
「〇〇犬にしては大きいな・小さいな」
「〇〇犬にしては足が短いな・長いな」
「〇〇犬にしては鼻が長いな・短いな」
など、〝標準〟と照らし合わせることで同一犬種の中の〝幅〟を知っていくのだ。
おそらくこういったことは別の業種でも起こっていることだと私は思っている。
タイヤ作りの仕事をしている人は、車に使われているタイヤはもちろん、小学校の校庭に半分ずつ埋まっているタイヤの遊具や、動物園のサルが遊んでいるタイヤのブランコでさえも「あ、あれは〇〇産の◇◇のタイヤだな」といった見方をすると聞いたことがあるし、むかしテレビで放映されていた「TVチャンピオン」や、最近の「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」などに出てくる人たちはほぼ、各業界でよく似た経験をしているだろう。
知らない人からすればどこがどう違うのか全く分からない部分に気付く。
これは本当に、先に述べた「意識」と、「知識」「情熱」「経験」の賜物で、そういう「ある分野において目が利く人」に私は魅力を感じるらしい。
初生雛鑑別師の人数は200名いるかいないかくらいのようで、レアな職種を好む傾向もある私としてはたまらなく興味があった。
・・・・・・ところが・・・・・・
ガ━━Σ( ̄◽︎ ̄;)━━ン!!
受講資格
「満25歳以下」!
「視力1.0以上」!
私の初生雛鑑別師への夢は早々に砕け散ったのであった。