『犬のタロキチ』という話がある
2004年(平成16年)に開始されたテレビ番組『人志松本のすべらない話』第1回の第1話目に、次長課長河本が発表した話である
当時は私も腹がよじれるほど笑い転げて、芸能人の中にも『犬のタロキチ』の話が好きだと公表している人は多くいた
その内容とは
「昔ね、犬を飼ってたんですよ。タロキチっていう名前の。家族みんなで楽しく暮らしてたんですけど、親が離婚することになって、僕とお姉ちゃんはお母さんのほうについて行くことになって。それで、犬も連れていこうって思ってたんですけど、引越し先は犬を飼ってはいけないところやからタロキチは捨てなさいって言われて。そしたらお姉が「親の勝手な理由で離婚するのに、なんで犬を捨てなアカンの?!ひどすぎる!」って言って、オカンとめっちゃ喧嘩になって。それでも、家を取るか犬を取るかっていったら家を取らなしゃーないってなって、タロキチを泣く泣く山に捨てよかってことになって、3人で山に捨てに行ったんだけどみんな大泣きで、お姉ちゃんが「タロキチごめんね、ごめんね」って言ってなかなかタロキチを離せない。ここは俺がしっかりせなアカンって思って「お姉ちゃん、貸して」ってタロキチを抱いて、「タロキチ、ごめんな」って言いながら山にそっと置いた瞬間、タロキチブァ〜〜〜ッ!って走っていったんです。え〜・・・タロキチ、そんな逃げ方ある・・・?」
といった感じ
愛情はまったく伝わってなかったんやな〜(笑)というオチである
私はこの話はいまも面白いと感じるし、これは当時の話なので何も問題ないと思っている
でもこれ、初出しが18年前だったからウケたんだろうな〜と、しみじみ考えたりもするのだ
このすべらない話の初回放送が大好評で、第2回か3回放送のあたりでは一般視聴者からすべらない話を募ってオーディションを行い、面白かった話をテレビで放送していたのだが、その一般視聴者の話の中に
「飼っていた犬を散歩させるのが面倒なときにはよく鎖を外して勝手に散歩させていたんです。ある時父親が帰ってきて、車を洗っていたのでどうしたのか尋ねると「猫を轢いた」とのこと。その夜、犬の帰りが遅いことに気づき、家族みんなで近所を探すと、血まみれの犬が帰ってきたんです。オトン、轢いたんネコちゃうやん。」
という話もあり、テレビ関係者が大爆笑しているというひとコマがあった
タロキチの話がウケていた時代だから、きっとこの話もウケたのだろうけれど、今あらためて観ると、わずか18年前のことだけれど「発展途上国なのか?!」と思ってしまった
ちなみにマジメなことを述べると、愛護動物を遺棄した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる
犬の放し飼いについては、法律上は努力義務とされているが各都道府県によっては30万円以下の罰金刑が科せられるところもある
私の親の子供時代は平気で犬を捨てていたと聞くが、当時はまだまだ日本も戦後の混乱期から立ち直ろうとする時代で、動物愛護など謳っている余裕などなくて当然だっただろう
しかし、昭和48年に動物管理法(←現動物愛護法)が定められてからも、日本人によくある「捨てればどこかで生き延びてくれるだろう」という無責任な思いを『最後の愛情』と考える傾向は今もまだ消えない
「お笑いの話なんだから、そんなに堅苦しいことを言わずに笑ってあげればいいじゃないか」
という人もいるだろう
もちろん当時は私も素直に笑ったのだ
芸人さんの話し方、オチへの持っていき方など、本当に芸のテクニックが光る、楽しいエンターテインメントだと思っている
けれどそろそろ、こういったことで笑う時代は卒業してもらいたい
「BPOか!」と責められそうだけれど、やはり時代が変わってきているのは事実
その昔は闘犬で犬が喰い合う血みどろの光景を娯楽としていたが、今は明らかに批判されるのと同様である
急激に変わろうとしている現代
変わるべきはテクノロジーのみではない
人間の心の中にこそ、変化が求められている